心房細動とは
心房細動とは、何らかの原因で心房内に流れる電気信号が乱れることで心房が細かくけいれんして血液をうまく送り出せなくなる病気のことです。
正常な心臓は、心臓内で発生する電気信号によって規則正しい収縮と拡張(拍動)を繰り返しています。ところが心房細動にかかると、何らかの原因で心房内に流れる電気信号が乱れることで心房が細かくけいれんして血液をうまく送り出せなくなってしまいます。
心房細動によって引き起こされる大きな病気が2つあります。「脳梗塞」と「心不全」です。
①心房細動が原因による「脳梗塞」
心房細動により心房がしっかり動かなくなることで、心房の中で血栓が形成されます。血栓が生じるのは左心耳と呼ばれる部位が最も多いです。この血栓が脳の血管に詰まることで脳梗塞が起きます。
心房細動が原因の脳梗塞は重症になることが多く、直接命に関わる、あるいは大きな麻痺による後遺症が残ることが多いとされています。
②心房細動が原因による「心不全」
心房細動により心臓から全身に血液を送り出す力が弱くなり心不全が起こりやすくなります。
心房細動の原因
心房細動は年齢を重ねることに発症リスクが高まります。
加齢以外の原因としては、心筋梗塞や僧帽弁膜症などの心臓に関連した病気、糖尿病、メタボリックシンドロームなどが挙げられます。また、飲酒や喫煙などの生活習慣やストレスが原因になる場合もあります。
心房細動の症状
心房細動の症状には個人差があり、中にはまったく自覚症状のない方もいらっしゃいます。
主な自覚症状としては、「動悸」、「めまい」、「胸の不快感や苦しさ」、「倦怠感」などが挙げられます。自覚症状がなく、自覚症状が出たときには心房細動が進行していたというケースも多いです。
当院の心房細動の検査と診断
心房細動の診断のため心電図検査を行います。
心電図は心臓が拍動するときに発生する微弱な電気活動を体表から記録し、その波形により心臓の状態を類推する検査手法です。
また、動悸症状がたまに起きるという患者さんに対しては、「ホルター心電図」「携帯型心電計」の機器を貸し出しします。24時間普段と変わりない生活を送っていただき、日常生活の中で記録した心電図を基に診断いたします。
当院の心房細動の治療
当院における心房細動の治療は、「お薬による治療」、「カテーテルアブレーション治療」、「メイズ手術(外科的治療)」の3種類があります。ここではそれぞれどのような目的で、どのような治療が行われるのかを解説します。
①お薬による治療
動悸などの自覚症状でお困りの方や脳塞栓症を発症する恐れのある方で、不整脈のなんらかの治療が必要な場合の初期段階としてお薬による治療を行います。お薬による治療は根治的なものではないため、飲み続ける必要があります。
・「抗凝固薬」…脳梗塞を予防するお薬
抗凝固薬は血液を固まりにくくしてサラサラにするお薬です。不整脈が原因で心房内に血栓ができることを防ぐために服用します。
高齢者の方、高血圧、糖尿病、心不全の方、脳梗塞や一過性脳虚血発作の既往歴のある方は、血栓ができやすい状態にあるため積極的に抗凝固薬を用います。
・「抗不整脈薬」…心房細動自体を抑えるお薬
抗不整脈薬は、不整脈の原因となる心房内に流れる乱れた電気信号をブロックすることで症状を軽減するお薬です。
抗不整脈薬を用いた治療法には、心拍が速くならないように調整する「レートコントロール」と心房細動を止めて規則的な心拍を維持する「リズムコントロール」の2種類があります。
②カテーテルアブレーション(血管内手術)
カテーテルアブレーションとは、血管の中から心臓にカテーテル(直径2mmほどの細い管)を入れて、心臓の左心房内にある不整脈を起こす箇所を高周波で焼灼、あるいはバルーンで冷凍焼灼して治療する方法です。
治療の際の切開箇所も小さいので体への負担が小さく、なにより心房細動の根治を期待できる治療法となります。当院では治療を不整脈専門医が担当いたします。治療時間は1.5〜3時間、入院期間は3〜4日です。全身麻酔による無痛の治療にも対応しておりますので、ご相談ください。
③メイズ手術(外科的治療)
メイズ手術とは、心房壁を迷路状に切開して再度縫い合わせることで、心房細動を起こす回路を遮断して心房細動を治療する手術です。
最近では切開する代わりに高周波で焼灼、あるいは冷凍焼灼することがほとんどです。体への負担が大きい手術のため、心房細動と他の心臓の病気が合併しているときに同時に治療を行うことが多いです。
心房細動になっている期間が長く、治療できる可能性が低い場合、あるいは高齢などでメイズ手術は身体への負担が大きいと判断した場合には、血栓ができやすい左心耳と呼ばれる部位のみ切除する場合があります。