先天性心疾患とは
先天性心疾患とは、生まれつき心臓や血管の形状が正常とは異なることで心臓や血液の働きに障害が起きる病気のことを指します。先天性心疾患の赤ちゃんは、およそ100人に1人、年間で1万人が生まれています。
先天性心疾患の種類は多岐にわたり、その疾患の重症度は人それぞれです。自然に治ってしまう軽症の方もいれば、複数回の手術を受けなければならない重症の方もいます。
先天性心疾患の原因
現代の医学をもってしても、先天性心疾患の原因は不明と考えていいでしょう。多くの原因が複雑に影響することで起こるとされていて特定ができないからです。
胎児の心臓が作られる段階で、多数の遺伝子と生活習慣などの環境要因が加わることで発症するとされています。そのため、妊娠中の飲酒や喫煙、薬の服用、風疹ウイルス感染などでも発症リスクが高まる可能性が指摘されています。
先天性心疾患のタイプと症状
先天性心疾患は種類が多いのですが、大きく分けて「非チアノーゼ性心疾患」と「チアノーゼ性心疾患」の2つに分類されます。
「チアノーゼ」とは、血中の酸素が不足して皮膚や粘膜が青紫色に変色する症状のことです。原因は、生まれつき心臓や血管の形状が正常と異なるため、肺を通過して酸素を取り込むべき静脈血が、動脈に流れ込んでしまうことによって発症します。
非チアノーゼ性疾患
心臓に穴があったり動脈と静脈の間によこ道があり、大量の血液が心臓と肺の間を空回りして心臓や肺に負担がかかるタイプです。先天性心疾患の半分以上を占めます。
非チアノーゼ性心疾患では皮膚や粘膜の変色が認められず、成人してから心電図検査での異常や、精密検査の結果などで先天性心疾患が判明することがあります。
幼少期の症状としては、呼吸が速くなり苦しそうになり、発汗が多く、ミルクが飲めないため体重が増えないといったものがあります。
非チアノーゼ性心疾患の代表的な病名としては以下が挙げられます。
・心房中隔欠損症
心臓の中の血液を受け取る働きの部屋「心房」の左右を隔てる壁に穴があいている疾患です。
・心室中隔欠損症
心臓の中の血液を送り出す働きの部屋「心室」の左右を隔てる壁に穴があいている疾患です。
・房室中隔欠損症
心房と心室を隔てる壁に穴があいている疾患です。
・動脈管開存症
胎児期に開いている動脈管(大動脈と肺動脈間にある血管)が、出生後も自然閉鎖せずに開いた状態のままの疾患です。
チアノーゼ性心疾患
チアノーゼを主な症状とするタイプです。先天性心疾患の30〜40%を占めます。
チアノーゼ性心疾患の代表的な病名としては以下が挙げられます。
・ファロー四徴症
心室中隔欠損、肺動脈狭窄、大動脈騎乗、右心室肥大の4つの疾患を併せ持つ疾患。
・完全大血管転位症
心臓の血液の出口となる血管が入れ替わっている(転位)疾患。左心室につながるべき大動脈が右心室につながっており、右心室につながるべき肺動脈が左心室につながっています。
・三尖弁閉鎖症
右心房から右心室への血流を調節する「三尖弁(さんせんべん)」が生まれつき閉鎖している疾患です。
・肺動脈閉鎖症
心臓から肺へ血液を送り出す肺動脈が生まれつき閉塞している疾患です。
当院の先天性心疾患の検査と診断
最近は胎児の状態で超音波検査(エコー)により発見できるようになりました。早ければ受精後20週(5ヵ月)で、多くは7〜8か月後で胎児の心臓が成長した頃にエコーで診断します。
成人の場合は、大人になってから心電図検査で異常を指摘され、精密検査の結果先天性心疾患が判明することがあります。心電図で異常と言われた場合には、超音波検査を実施します。
当院における先天性心疾患の治療
当院では、成人の先天性心疾患患者さんを対象に診療を行います。
心不全に対する薬物療法を始め、不整脈に対するカテーテルアブレーションおよびペースメーカ植え込み術、狭心症や心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症に対するカテーテル治療、弁膜症に対する弁置換術および弁形成術など、様々な心疾患の症状に対して、最新の設備と知識を応用した治療を行います。
小児の先天性心疾患患者さんに対する治療が必要な際には、近隣の施設あるいは関連する東京慈恵会医科大学附属病院や埼玉県立小児医療センターに速やかにご紹介いたします。