心臓腫瘍の外来診療は宇都宮記念病院

028-622-1991
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心臓腫瘍

心臓腫瘍とは

心臓腫瘍は、心臓に発生する腫瘍のことです。その種類には「原発性(良性、悪性)」と「転移性(悪性)」の2つがあります。

1)原発性心臓腫瘍(良性)

原発性心臓腫瘍とは、心臓から発生する腫瘍のことです。心臓に腫瘍が発生するのはごくまれで他の部位と比べて発症率が0.1%以下とされています。またその大半を占めるのが粘液腫という良性腫瘍であり、大きな病気として取り上げられることがないため認知度が低いです。

しかし良性腫瘍だからといって安心はできません。

粘液腫は転移もしますし、増殖することで房室弁を圧迫して急激な心不全、不整脈を引き起こします。また、心臓腫瘍の表面に形成された血液のかたまり(血栓)がはがれて、動脈を閉塞させる可能性もあります。良性腫瘍ですが発症することで、心臓の機能を低下させることに変わりはありません。

2)原発性心臓腫瘍(悪性)

悪性の原発性心臓腫瘍には、肉腫、心膜中皮腫、リンパ腫などがあります。

・肉腫

肉腫とは全身の骨や軟部組織(筋肉、神経、脂肪)から発生する悪性の腫瘍です。心臓の右心房、または左心房に発生して心臓内の血流を障害することがあります。また、右心房に発生した腫瘍が肺に転移する可能性もあります。

・心膜中皮腫

心臓表面を覆う心膜から発生する悪性の腫瘍です。進行すると心臓の周囲に体液が溜まる心タンポナーデ状態となり、この体液が心臓の動きを障害して、軽い運動ですぐに息切れや動悸を強く自覚するようになります。

・リンパ腫

血液のがんの一種で、白血球の中のリンパ球ががん化することで起こります。心臓で発生するリンパ腫は極めてまれです。通常はエイズ患者にみられ、急速に増殖します。

3)転移性心臓腫瘍(悪性)

転移性の心臓腫瘍は、体内の別の臓器で発生した腫瘍が心臓に広がったもので、常に悪性です。その多くは肺から広がってきたものになります。

心臓腫瘍の原因

心臓腫瘍の原因は不明とされています。

心臓腫瘍の症状

心臓腫瘍の症状は、軽症のものから重篤な心機能不全を引き起こす場合もあります。良性腫瘍であっても、心臓の機能を障害している場合は悪性腫瘍と同じように死に至る可能性があります。

心臓腫瘍の重要な症状としては以下のものが挙げられます。

・心不全

動悸、息切れ、足のむくみ、疲労感(脱力感)、四肢の冷えなどの症状を引き起きします。

・不整脈

動悸、めまい、脈が飛ぶ、胸が苦しい、気を失うなどの症状を引き起こします。

・低血圧

立ちくらみ、めまい、倦怠感などの症状を引き起こします。

当院における心臓腫瘍の検査と診断

当院において心臓腫瘍の診断には、心臓超音波検査(心エコー)、CT検査、MRI検査による画像検査を行います。画像検査によって腫瘍の場所や大きさを確認することができます。

腫瘍の一部を生検して、良性か悪性か特定することで病気の見通しの確認や治療法を検討することに役立てます。

当院における心臓腫瘍の治療

心臓腫瘍のタイプによって治療法は異なります。

・良性の心臓腫瘍の治療

小さな良性の原発性心臓腫瘍の場合は、手術で切除することで完治に期待ができます。腫瘍の大きさと場所によっては小さい傷で手術を行う低侵襲心臓手術(Minimally Invasive cardiac SurgeryMICSミックスと呼びます)が可能なことがあります。また、症状が発症していない場合には経過観察を行う場合があります。

・悪性の心臓腫瘍の治療

悪性の心臓腫瘍の場合は手術で完全に切除するのは困難ですが、腫瘍が血流を障害して重篤な心機能不全を引き起こしている場合は手術で可能な範囲内で切除します。

手術が不要な場合は、病気の進行を遅らせるために、化学療法、放射線療法を行います。ただしリンパ腫の場合は化学療法が著効する場合がありますので諦めずに主治医に相談してください。

この記事の監修医師

宇都宮記念病院

心臓外科國原 孝

1991年、北海道大学 医学部卒業。2000年からはゲストドクターとして、2007年からはスタッフとして計9年間、ドイツのザールランド大学病院 胸部心臓血管外科に勤務し、臨床研修に取組む。2013年より心臓血管研究所付属病院 心臓血管外科部長、2018年より東京慈恵会医科大学附属病院 心臓外科 主任教授を経て、2022年より宇都宮記念病院 心臓外科 兼務。