重症心不全の外来診療は宇都宮記念病院

028-622-1991
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重症心不全

重症心不全とは

心不全は心臓の機能が低下して、全身に十分な血液を送り出せなくなった状態をいいます。

重症心不全とは、この心不全に有効とされる治療をすべて行っても症状改善が見られず、症状によって日常の身体活動の制限がある状態をいいます。

重症心不全の原因

「心不全」という言葉自体は疾患の名称ではなく、様々な原疾患(原因の病気)によって引き起こされる症状の総称です。以下に挙げるのが心不全の主な原疾患になります。

■心臓を動かす筋肉「心筋」の異常による心不全

・虚血性心疾患
 虚血性心筋症など

・心筋症
 肥大型心筋症、拡張型心筋症など

・心毒性物質
 習慣性物質(アルコールなど)、重金属、薬剤、放射線障害

・感染症
 心筋炎など

・免疫疾患
 関節リウマチ、多発性筋炎

・妊娠
 周産期心筋症(産褥心筋症(さんじょくしんきんしょう)を含む)

・浸潤性疾患
 サルコイドーシス、アミロイドーシスなど

・内分泌疾患
 糖尿病

・代謝疾患
 ファブリー病、ポンペ病、ハーラー症候群、ハンター症候群

・先天性酸素異常
 筋ジストロフィ、ラミノパチー

・筋疾患

■血液の流れの異常による心不全

・高血圧

・弁膜症、心臓構造の異常
 <先天性>
 先天性弁膜症、心房中隔欠損、心室中隔欠損、その他の先天性心疾患
 <後天性>
 大動脈弁、僧帽弁、三尖弁疾患など

・心内膜の異常
 好酸球性心内膜疾患、心内膜弾性線維症

・高心拍出心不全
 重症貧血、甲状腺機能亢進症、パジェット病、動静脈シャント、妊娠、脚気心

・体液量増加
 腎不全、輸液量過多

■不整脈による心不全

・頻脈性
 心房細動、心房粗動、心房頻拍、心室頻拍など

・徐脈性
 洞不全症候群、房室ブロックなど

重症心不全の症状

心不全によって身体に送り出される血液が不足するために、全身で様々な症状が引き起こされます。その中でも、呼吸困難(息切れ)、動悸、むくみは特に起こりやすい症状です。

心不全の症状から重症度を測るのによく用いられるのが、ニューヨーク心臓協会が定義している「NYHA心機能分類」です。日常の身体活動で、どのような症状があらわれるかで分類分けされています。

当院の心臓血管外科ではこれらの症状をヒアリングしながら、適切な治療を行っていくことになります。

NYHA心機能分類

分類 症状
軽症心不全 I度 心疾患はあるが、日常的の身体活動において症状はあらわれない。
II度 日常的の身体活動において、呼吸困難(息切れ)、動悸、疲労感、狭心痛といった症状があらわれる。安静時には無症状。
中等症心不全 III度 日常的な身体活動以下でも、呼吸苦(息切れ)、動悸、疲労感、狭心痛といった症状があらわれる。安静時には無症状。
重症心不全 IV度 心疾患のため、いかなる身体活動も制限される。安静時にも、心不全の症状や狭心痛があわらわれる。わずかな労作で症状が増悪する。

また、一般的に心不全の予後はよくないとされています。

心不全は適切な治療にとって一時的に症状は改善しますが、残念ながら心不全は完全に治ることはなく症状がぶり返し起こります。心不全が急性増悪を繰り返す度に徐々に心臓の能力が低下していき重症心不全になっていき、最後には命を落とす危険があるため注意が必要です。

当院における重症心不全の検査と診断

当院における心不全の検査は以下のような流れになります。 

・問診、身体検査を行います
血圧、脈拍、血中酸素濃度を計測します。診察にて、聴診器で心雑音、呼吸音を確認にしたのち、心不全特有の症状があるか問診します。 

・心不全のための検査を行います
心不全の検査では、胸部X線撮影(レントゲン)、血液検査、心電図、心臓超音波検査(心エコー)などを行います。その中でも心臓超音波検査は心不全の原因と重症度を知るうえでとくに重要な検査です。

そのほか心不全の原因の詳細を明らかにするために、運動負荷試験、心臓カテーテル検査、冠動脈造影検査などの検査が必要となることもあります。

当院における重症心不全の治療

心不全の治療は、原疾患と種類や重症度によって治療法は異なります。当院では、循環器内科と心臓血管外科の専門医によるハートチームのもと、原疾患の種類と重症度を診断して、患者さまに最も適切な治療法を行います。

軽症心不全の治療として薬物療法では、血管を拡張するためのお薬や心臓の働きを良くするためのお薬や、不整脈の発症を抑えるためのお薬や利尿薬を処方いたします。

中〜重症心不全の治療として「ペースメーカ植え込み術」を行います。当院ではMRI検査にも対応できるタイプのペースメーカを使用しています。また、リードがなく10円玉程度の大きさに小型化されたリードレスペースメーカ植え込み手術も行っております。

中〜重症心不全の原因が弁膜症や虚血性心疾患にある場合には、それを治療することにより心不全の改善が期待される場合に限って外科的治療を行います。その内容に関しては他の項目を参照してください。

この記事の監修医師

宇都宮記念病院

心臓外科國原 孝

1991年、北海道大学 医学部卒業。2000年からはゲストドクターとして、2007年からはスタッフとして計9年間、ドイツのザールランド大学病院 胸部心臓血管外科に勤務し、臨床研修に取組む。2013年より心臓血管研究所付属病院 心臓血管外科部長、2018年より東京慈恵会医科大学附属病院 心臓外科 主任教授を経て、2022年より宇都宮記念病院 心臓外科 兼務。