生理検査部
スタッフ紹介
部長 【医師】 |
呼吸器病センター長 副院長 森 清志 |
日本呼吸器学会専門医・指導医 日本呼吸器内視鏡学会専門医・指導医 日本内科学会認定医 日本がん治療認定医 肺がんCT検診認定医 |
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副部長 【医師】 |
総合検診センター長 海野 均 |
日本産科婦人科学会専門医 日本医師会認定産業医 人間ドック健診専門医 日本人間ドック学会認定医 日本乳がん検診制度管理中央機構マンモグラフィ読影認定医 日本総合健診医学会・日本人間ドック学会 人間ドック健診指導医 医療安全管理者資格 |
副部長 【医師】 |
耳鼻咽喉科科長 城守 美帆 |
日本耳鼻咽喉科学会専門医 補聴器適合判定医 日本めまい平衡医学会めまい相談医 身体障害者福祉法15条指定医 |
技師長 | 診療技術部検査科 高嶋 浩一 |
日本臨床神経生理学会専門技術師(脳波/筋電図・神経伝導) 術中脳脊髄モニタリング認定技術師 臨床工学技士 |
技師長代理 | 総合検診センター 齋藤 久美子 |
日本超音波医学会超音波検査士(健診) |
副技師長 | 生理検査室 中山 泰政 |
日本超音波医学会超音波検査士(消化器) |
副技師長 | 特殊検査室 加藤 有斗 |
日本超音波医学会超音波検査士(消化器・泌尿器) 日本臨床検査同学院緊急臨床検査士 日本臨床検査同学院2級検査士(生化学) |
臨床検査技師42名、受付事務員1名
スタッフ(組織図)
検査項目
健診センター | 人間ドック・施設健診・巡回健診業務 |
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【項目】心電図、肺機能、超音波(腹部・乳腺・頸動脈・甲状腺)、脈波伝播速度・足関節上腕血圧比(PWV・ABI)、腹囲測定、聴力・騒音検査 | |
生理検査室 | 生理検査 |
【項目】超音波(腹部・心臓・下肢静脈・頸動脈・乳腺・甲状腺・体表、経食道心臓)、心電図、負荷心電図、R-R間隔、ホルター心電図、体外式イベントループレコーダー、肺機能、PWV・ABI、糖尿病性多発神経障害(DPN)チェック、ポリソムノグラフィ(PSG) | |
特殊検査室 | 耳鼻科領域検査 |
【項目】純音聴力、語音聴力、補聴器適合(音場閾値、音場語音、環境騒音)、耳鳴、耳管機能、インピーダンスオージオメトリー(ティンパノメトリー、耳小骨筋反射)、重心動揺 | |
神経生理検査 | |
【項目】脳波(EEG)、神経伝導(NCS)、疲労試験(Fatigure Test)、瞬目反射(Blink Reflex)、Electroneurography(ENoG)、聴性脳幹反応(ABR:閾値も含む)、体性感覚誘発電位(SEP)、前庭誘発頸筋電位(cVEMP)、前庭誘発眼筋電位(oVEMP)、電気眼振図(自発眼振、注視眼振、指標追跡、カロリックテスト、Visual Suppression test) | |
術中神経モニタリング | |
【項目】経頭蓋運動誘発電位(MEP)、SEP、硬膜下体性感覚誘発電位(S-SEP)、視覚誘発電位(VEP)、網膜電位(ERG)、ABR、蝸牛神経活動電位(CNAP)、異常筋電図(AMR)、4連反応比、脳神経同定(Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ、Ⅹ、Ⅺ、Ⅻ)、フリーラン筋電図(Free-run EMG) | |
検体検査/病理検査 | |
【項目】PCR(リアルタイムPCR)、免疫機能検査、組織学的検査 |
検査関連学会認定資格(延べ人数)
日本超音波医学会超音波検査士…健診9名、消化器5名、体表臓器2名、循環器2名、泌尿器1名
日本臨床神経生理学会専門・認定技術士…脳波1名、筋電図・神経伝導1名 術中脳脊髄モニタリング1名
検査について
心電図とは
心臓は絶えず拡張と収縮を繰り返しながら、血液を全身に送り出すポンプとして働いています。
この心臓は筋肉の塊で、2つの筋肉からできています。1つは心臓の筋肉の大部分を占める固有心筋で、血液を送り出す作業をしています。固有心筋は骨格筋と同じ横紋構造をもっていますが、自分の意思で動かすことはできません(不随意筋)。もう1つは固有心筋を興奮させて拡張と収縮をするように命令をする特殊心筋(刺激伝導系)です。心臓は電気製品が電源を入れると動きだすように、刺激伝導系に電気的な興奮が起こることにより、血液の循環ポンプとしての働きが発現します。この時に発生する微弱な電気的興奮の経時的変化を、体表面から電極により導き出し、誘導コードを経由して心電計に取り込み、増幅して波形として描かせたものが心電図です。
心電図検査は不整脈の診断に最も威力を発揮しますが、心臓の位置や傾き、心筋の異常、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、先天性の心疾患などがわかります。
そのため術前検査や健康診断などでは、スクリーニング検査として行われています。
負荷心電図とは
心筋は冠動脈から酸素と栄養を供給されていますが、何らかの原因で血管が狭くなって需要とのバランスくずれ、一時的に心筋が虚血状態になるのが狭心症です。負荷心電図は患者様の自覚症状から狭心症が疑われても、安静時の心電図では異常が現れない場合に運動などの負荷をかけて、症状が出やすい状態にして心電図の変化を調べる方法です。実際には決められた高さの凸式の2段の踏み台を年齢、性別、体重に応じて決められた速度で昇降するマスター2階段法、胸に電極を装着した状態で、ベルトコンベア状の装置の上で歩行やジョギングをして、運動中の心電図や血圧の変化をみるトレッドミル法、そしてトレッドミル法と同様に胸に電極を装着した状態で機械的、電気的に制動がかかる固定された自転車のような装置をこいで、運動中の心電図や血圧などの変化をみるエルゴメーター法があります。
マスター2階段法
トレッドミル法
エルゴメーター法
ホルター心電図とは
携帯用の心電図記録器を身体に取り付けて仕事、食事、睡眠など日常生活中の心電図をデータ保存し、約10万心拍といわれている1日分のすべての波形を、コンピュータで解析する検査がホルター(開発者の米国エンジニアNorman Holter博士から命名)心電図検査です。ホルター心電図では日常生活をしながら長時間(一般に24時間)心電図を連続記録することにより、通常の心電図検査(30秒から3分程度の記録)では検出が困難な異常所見を見つけることができます。特に記録中は行動記録カードを記載することで動悸、めまい、息切れなどの自覚症状が心電図異常と同時に出現するか否かの鑑別します。また、薬物治療の効果判定やペースメーカーの機能判定などにも利用されています。
体外式イベントループレコーダーとは
スパイダーフラッシュ
ホルター心電図では24時間連続して心電図を記録することで、より低頻度の不整脈を検出できますが、時間的な制約があり、症状の出現が予測できない発作性の不整脈の場合は診断ができないこともあります。
より長時間に渡って日常生活中の心電図を記録する体外式イベントループレコーダーは、ホルター心電図と同じ携帯型の小型心電計ですが、ホルター心電図が装着中、常に心電図を記録するのに対して、体外式イベントループレコーダーは、患者様が自覚症状を認識した際に、イベントボタン(緑色)を押した時の前後の心電図の記録のみを行います。よって約1〜2週間程度の長期間記録が可能であるという利点があります。
R-R間隔とは
1973年にWheelerらにより糖尿病性自律神経障害を有する患者様において、心電図のR-R間隔の変動が著明に低下することが報告され、副交感神経(迷走神経)障害を検出する手段として用いるようになりました。CVR-R(Coefficient of variation of R-R interval)は国内で最も汎用されているR-R間隔変動の時間領域解析の簡便法です。この方法は安静時と深呼吸時に心電図を記録して、連続した100心拍のR-R間隔の平均値と標準偏差(SD)を算出し、変動係数(CVR-R) = SD/平均値×100(%)で求めます。健常人でも加齢に伴いCVR-Rは低下しますが、安静時において2.0%未満であれば心自律神経障害の可能性が示唆されます。
脈波伝播速度・足関節上腕血圧比(PWV・ABI)とは
PWV・ABI
PWVは血液が心臓から押し出されたときに生じる動脈の拍動が手や足の末梢の動脈に伝わるまでの速さです。その計算式はPWV=(血管弾性率×血管壁圧)/(2×血管径×血液密度)で表され、血管が硬いほど、また血管内腔が狭いほど、PWVは速くなります。平均値は500〜700cm/秒前後で、1,400cm/秒以下が基準値です。
ABIは足関節と上腕の血圧比で、ABI=足関節収縮期の血圧÷上腕収縮期の血圧(左右の高いほう)で表され、血管の詰まり具合(狭窄の程度)がわかります。基準値は1.0≦ABI≦1.40です。
超音波検査とは
超音波検査とは検査技師が持った探触子(プローブ)から患者様の身体に向けて、高い周波数の音波(超音波)を送信して、体内構造物のそれぞれの深さ(距離)に対応した反射波(エコー)を受診し、それを画面上にリアルタイムで映像化して病変を探す手法です。最大の利点としては超音波は人体に対してまったく無害であることです。そのため短期間で繰り返し検査を行うことが可能であり、苦痛をほとんど伴わないことから、臨床各科に幅広く利用されています。超音波検査の目的は患者様の様々な症状の原因となる病変の拾い上げ(存在診断)にあると言えます。対象となる臓器にもよりますが、超音波検査は非常に小さな病変に対しても、優れた検出能力をもっています。
さらに、発見された病変がどのようなものであるか、例えば、肝臓に腫瘤が発見された場合の良性、悪性の鑑別(質的診断)にも用いられます。また、病変の推移や治療が行われた場合の効果判定などの経過観察にも適した検査です。当院では健康診断、人間ドック部門でも腹部、乳腺、頸動脈、甲状腺の超音波検査が行われており、病院内ではそれに加えて心臓、下肢動静脈、体表などの部位の検査も導入されています。そのほかには専門医が立ち会いのもと、経食道心臓超音波検査や組織の採取、ドレナージ、造影、薬剤注入を目的とした超音波下穿刺も行われています。
腹部超音波検査とは
超音波検査では絶食が検査前の条件となります。胆嚢は食事によって胆汁の排泄が起こり収縮してしまうため観察が困難になり、また、膵臓は胃の後方に位置することから、食事のために胃中に入った空気などにより描出が難しくなります。腹部超音波検査の対象臓器と代表的疾患はでは、肝臓は肝嚢胞、肝血管腫、肝細胞腺腫、限局性結節性過形成、肝細胞癌、胆管細胞癌、転移性肝癌、肝膿瘍、脂肪肝、急性・慢性肝炎、日本住血吸虫など。胆嚢は胆嚢結石、急性・慢性胆嚢炎、胆嚢癌、腺腫、コレステロールポリープ、アデノミオマトーシスなど、胆管は総胆管結石症、胆外胆管癌、総胆管嚢腫、胆道気腫など、膵臓は急性・慢性膵炎、膵管癌、島細胞腫、膵嚢胞性疾患など、脾臓は脾腫(肝疾患・門脈圧亢進症・感染症・血液疾患)、脾嚢胞、脾膿瘍、脾梗塞など、消化管は胃癌、イレウス、腸重積、虫垂炎、消化管穿孔、大腸癌、潰瘍性大腸炎などがあります。
乳腺超音波検査とは
乳房は15〜20の独立した腺葉が放射状に配置しています。腺葉はそれぞれ乳管を有し、乳頭へ開口します。乳腺組織と浅在筋膜浅層の間にはCooper靭帯があり、これらにより乳房が形成されています。乳腺超音波検査は検査用のゼリーを乳房全体に塗り、プローブを接触させて行います。
検査では乳腺実質の変化、および腫瘤病変、乳管拡張、乳管内病変の有無を調べます。また、乳癌を疑う所見があった場合は、乳腺所属リンパ節の腫大を確認します。乳房は年齢、月経周期、妊娠や出産経験などで変化がみられるので、それらを考慮して検査所見を記載します。乳腺超音波検査でわかる疾患は乳腺症、嚢胞、乳腺炎、乳管内乳頭腫、線維腺腫、葉状腫瘍、女性化乳房、乳癌などです。
甲状腺超音波検査とは
甲状腺は気管の全面と側面に位置する内分泌臓器です。HまたはU字型で右葉、左葉、峡部、体葉から構成されています。甲状腺超音波検査もやはり検査用のゼリーを頸部に塗りますが、プローブは強く押し付けず、頸部を圧迫しないように気をつけます。検査では甲状腺の大きさ、実質の変化、腫瘍の有無やカラードプラにより甲状腺の血行動態も調べることができます。甲状腺超音波検査でわかる疾患はバセドウ病、慢性甲状腺炎(橋本病)、亜急性甲状腺炎、嚢胞、濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫、甲状腺癌などです。
頸動脈超音波検査とは
頸動脈は大脳に血液を送る血管です。 胸部の大動脈から総頸動脈という血管が脳へ向かい、頸部で脳に血液を送る内頸動脈と、顔面に流れる外頸動脈に分かれます頸動脈超音波検査ではメタボリックシンドロームをはじめとした動脈硬化疾患の状況を把握します。頸動脈の動脈硬化は、虚血性脳血管障害のみならず、虚血性心疾患とも関連するため、血管障害のリスクを推測することができます。
下肢血管超音波検査とは
エコノミークラス症候群という病気がありますが、これは長い間同じ姿勢でいると足の静脈に血の固まりができ、体を動かしたとたん血の固まりが血管を通って心臓から肺へ行き、肺の血管に詰まってしまう肺塞栓症という病気を引き起こします。下肢血管超音波検査はこの深部静脈にある血栓を探るのに効果的な検査です。検査は足にゼリーを塗り、そこにプローブを軽く押しあてるだけです。
痛みや苦痛をともなわず、何度でも検査ができます。検査時間は病気や状態等で異なりますが、約30分から1時間程度です。検査時には、下半身はズボンやスカートは脱いでいただき、下着のみ着用した状態になっていただきます。
その他の超音波検査
下腹部(膀胱・前立腺・子宮・卵巣)、消化管、体表(脂肪腫など)の超音波検査も実施しています。
心臓超音波検査とは
胸から心臓に向けて超音波を当てて心臓の大きさ、動き、弁の状態、血液の流れなどを観察し、ポンプが正常に働いているかどうかを判断する検査です。 心臓超音波検査では心筋梗塞や心臓肥大、弁膜症、先天性疾患などがわかります。 さらに、心臓を包んでいる2層の膜(心膜)の間に液体がたまる異常(心嚢液貯留)や、心膜全体に瘢痕化した組織ができる収縮性心膜炎を検出する目的でも心エコー検査が行われ、大動脈壁の内層が裂ける大動脈解離も検出できます。また、治療方法の選択、治療効果の判定、手術時期の決定などにも役立ちます。
経食道心臓超音波検査とは
経食道心臓超音波検査は非常に鮮明な画像が得られ、心臓のすぐ後ろにある食道側から心臓を観察するため、骨や肺などに邪魔されない利点があります。そのため通常の心臓超音波検査では見えにくい場所や、より詳細な観察が必要な時に行っています。この検査では胃カメラのような超音波プローブを、のどから食道の内部に通すので不快感を伴うため、鎮静薬が投与され、のどに麻酔薬のスプレーを使用します。経食道心臓超音波検査は僧帽弁や大動脈弁の心内膜炎、心臓内の血栓などがないか調べたりする場合などに行われます。
超音波検査装置
肺機能検査とは
肺機能検査の測定装置は古くから水槽中を上下に動く円筒により気景を測定するBenedict-Roth型呼吸計が用いられていました。しかし現在ではステム化されたオートスパイロメータで、スパイロググム(肺活量・努力性肺活量・一秒量・フローボリューム曲線など)などの検査項目が測定できるようになっています。オートスパイロメータは内蔵されたシリンダーの動きによって気量を求めるタイプと、気速計、熱線流量計により流量を測定し、それを積分して気量を求めるタイプがあります(当検査室は後者のタイプです)。肺機能検査は疾患の機能的な重症度やその経過、健康診断や人間ドックなど肺のスクリーニング検査として用いられています。スパイログラムの検査項目のうち、%肺活量を縦軸に、一秒率を横軸にとった表により、%肺活量は80 %以上、一秒率は70%以上を正常域として換気障害の分類をしています。胸郭の縮小、運動障害、肺の伸展性の制限により換気が障害され、%肺活量80%を下回った場合を「拘束性換気障害」、空気の出入りするパイプである気道の炎症、攀縮などで呼気閉塞により呼出が障害され、1秒率が70%を下回った場合を「閉塞性換気障害」、両方が基準を下回る場合を「混合性換気障害」としています。また、努力呼出より得られるフローボリューム(気量•流量)曲線は曲線の大きさや形を観察して、そのパターン識別により換気障害を分類します。フローボリューム曲 線は、縦軸に気流量(L/sec) 、横軸に呼出最(L)をとって両者の関係を記録したものです。正常の曲線のパターンは努力呼出の開始直後に山のピークがあり、高さも十分で下降脚は、ほぼ直線のまま呼出の終わりまで降りてきます、それに対し、空気の出入りするパイプの通りが悪い閉塞性障害の場合は、その重症度にもよりますが、山(ピークフロー)が低く、ピークフロ一直後に気流量が急に減少し、下降脚は緩やかな勾配で呼出が終わるまで続きます。空気の入る器が悪い拘束性障害の場合は、ピークフローの後の下降脚は急に下降し、その形は底辺が縮まり、尖った三角形を呈します。
簡易型感覚神経伝導検査DPNチェックとは
糖尿病による高血糖状態が続くと、三大合併症と呼ばれる神経障害、網膜症、腎症が発症し、糖尿病性多発神経障害(diabetic polyneuropathy;DPN)は最も頻度が高く、早期に出現する特徴がありります。DPNは失明や人工透析の恐れがないため軽視されるきらいがあるが、臨床的には強い自発痛や重症化により足・趾の切断に至る場合もあり、生活の質(quality of life;QOL)の低下をもたらす深刻な合併症です。DPNチェックは簡易型の腓腹神経専用の感覚神経伝導検査装置です。
DPN検査装置
出血時間とは
出血時間は皮膚から出血した時、自然に止血するまでの時間を測る検査で、血小板数と血小板および毛細血管の機能を反映します。原理的には血小板数が一定以下になると出血時間はそれに伴い延長します。 また、血小板数が正常にもかかわらず出血時間が延長すれば、血小板機能異常がが疑われます。当検査室はデューク法を用い、耳朶をランセットもしくはメスで傷つけ、まず30秒後に出血液をろ紙で吸いとります(最初の血痕の直径が10mm以上でないと、正しく検査できていないいとされています)。その後、30秒ごとに出血液を吸い取り、血痕の大きさが1mm以下になったところが出血時間となります。基準値は2〜5分です。
出血時間の器具
脳波検査とは
脳波は頭皮から2-3cm下にある多数の脳神経細胞から発生している活動活動を波形として記録したものです。その波形を見ることにより、脳の機能的な状態が推察されます。脳波を記録するためには、頭皮に電極を貼り付け、脳波計により約100万倍に増幅する必要があります。脳波検査はてんかんの診断には不可欠な検査です。てんかんは、脳神経細胞が過剰の電気放電を起こし、痙攣や意識を失う発作を起こす疾患で、その分類やてんかん薬の効果判定などにも利用されています。
脳波の記録は 基本的には患者様がリラックスして目を閉じている状態で行います。しかし、安静時の記録では脳波に異常が出現しないことがあり、てんかんの種類には深呼吸や眠らせると、異常な脳波が出現することがあります。このように安静時の脳波では不明な、異常な脳波を検出するための操作を「賦活法」といいます。日常検査では開閉眼賦活法、過呼吸賦活法、睡眠賦活法、光剌激賦活法などが行われています。 ①開閉眼賦活法は脳波記録中に患者様に「目を開けてください」と指示して目を開けてもらい、約10秒後に目を閉じてもらいます。これを2〜3回繰り返し、脳波の変化をみます。健常者では開眼によりα波が抑制するαブロッキングという現象がみられます。
開閉眼賦活法をすることにより、αブロッキングの左右差や、閉眼直後に出現する異常脳波を検出することができます。②過呼吸賦活法は患者様に閉眼状態で、できるかぎり呼気が大きく速い呼吸(過呼吸)を3〜分繰り返してもらいます。過呼吸をすると血液中の二酸化炭素が減少します。すると脳血管が収縮して一時的に脳細胞が虚血状態になり脳波の波形が増大し、幅が広くなるビルドアップという現象が起きることがあり、この現象は健常な若年者ほど高率に出現します。過呼吸賦活で意識消失の発作を起こすてんかんの與常脳波を検出することができます。③睡眠賦活法は睡眠時に側頭部付近に異常脳波が出現しやすい側頭部てんかん(精神運動発作)を検出するため、眠った状態の脳波を記録します。④光刺激賦活法は目を閉じた患者の眼前約30cmのところにストロボを設置し、1秒間に剌激する頻度を3、6 、9 回というように3の倍数で増やしていきます。光刺激により、意識消失や痙攣を起こす異常脳波が検出されることがあります。
脳波検査室
ベッドサイドの脳波検査
末梢神経伝導検査とは
さまざまな司令や情報の交信は、神経の電気的な興奮により行われています。電線に電気が流れるように、神経を活動電位(インパルス)が伝わります。そして、その電線(末梢神経)を構成する軸索や髄鞘に、変性や脱髄(髄鞘の変性・消失)などの異常が発生すると伝導が悪くなり、末梢神経の障害害が現れてきます。臨床ではこれらの障害の状態、および部位の鑑別、治療や予後判定などを目目的として、外部(皮膚の表面)から強制的に電気刺激を与え、反応を調べる神経伝導検査が試みられています。末梢神経を電気で刺激すると、その神経が支配している筋肉や神経から活動電位が記録されます。その活動電位が発生するまでの時間を計測し、反応時間から神経伝導速度を求めたり、反応の大きさ(振幅)を計測したりすることにより、神経の障害を調べるのが末梢神経伝導検査です。日常検査では上肢の正中 、尺骨神経の運動神経伝導速度と知覚神経伝導速度、下肢では脛骨、腓骨神経骨の運動神経伝導速度、腓腹神経の知覚神経伝導速度が測定されています。
正常参考値として、上肢の正中、尺骨神経の運動神経の速度が50〜65msec、知覚神経が55〜75msec、下肢の脛骨、腓骨神経の運動神経40〜60msec、腓腹神経の知覚神経が40〜55msecです。
末梢神経伝導検査
誘発電位とは
誘発電位検査は感覚刺激(音・光・電気) を生体に与えることにより、脳中枢神経系から発生する電気反応(誘発電位)を記録する検査です。しかし、1回の刺激だけでは、反応は脳波の中に埋もれてしまい、識別することはできません。そこで刺激を与えた時点を基準に、数百・数千回の刺激に対する反応を、コンピュータにより瞬時に重ね合わせていきます。こ れにより刺激と無関係に出現している脳波は相殺されて平坦化し、刺激に よって一定の時間間隔をもって出現する感覚神経の反応は徐々に明瞭な波形に育っていくようになる。この方法 は「加算平均法」と呼ばれ、マイクロコピュターの普及により急速に発達した。誘発電位は生体に与える刺激の種類により聴性脳幹反応(音刺激;ABR)、体性感覚誘発電位(電気刺激;SEP)、視覚誘発電位(図形反転刺激、光刺激;VEP)に分類され、それらの反応は感覚神経系の客観的評価法として臨床応用されています。
誘発電位検査(ABR)
術中神経モニタリングとは
頭頸部、脊髄、大血管などの手術において、術後の合併症の発生を防ぐために術中神経モニタリング(IOM)が行われています。脳神経外科の開頭手術では,術者からの指示により術野の揺れがない体性感覚誘発電位(SEP)を主体にIOMを行い、血管のクリッピングなどをする際には。その前後で運動誘発電位(MEP)の評価を行っている。そしてSEPは各中枢への灌流領域の違いから内頸動脈内頸動脈、中大脳動脈は上肢SEP、前交通動脈や前大脳動脈は下肢SEPを選択し、さらに必要な場合は各種の誘発電位や誘発筋電図(EMG)を追加している。また、整形外科の脊髄手術ではNIM-Neuro を用いたFree-run EMGを主体にし、MEPと下肢SEPによりIOMを行なっている。
実際には椎弓根スクリューを用いた固定術で、機械的な脊髄神経根への侵襲によりFree-run EMGからの警告音が鳴った場合、MEPと下肢SEPを確認するという手法です。
術中モニタリング装置
標準純音聴力検査とは
音の伝搬には空気の振動が外耳道から鼓膜、耳小骨を経て内耳の蝸牛に伝わる空気伝導(気導)と、頭蓋骨から骨を介して蝸牛に直接伝わる骨伝導(骨導)があります。これらの音の伝導の違いを利用した純音聴力検査は、難聴を伝音難聴、感音難聴、混合難聴の3つのグループに分けることができます。この検査は気導、および骨導聴力検査があり、気導聴力検査ではヘッドホン(気導受話器)から出る気導音、骨導聴力検査では振動端子(骨導受話器)から出る骨導音を用いて聴力閾値の測定が行われます。
標準語音聴力検査とは
オージオメータから言語音を出力し、言葉の聞き取り(語音聴取閾値検査)と聞き分け(語音弁別検査)の能力を調べますが、当院では語音弁別検査のみ行っています。検査は「ことばの聞こえ方検査用紙 67-S語表用」と鉛筆(黒色B)3本を準備し、「ヘッドホンから聞こえてきた“あ”とか“い”などの言葉をひらがなでもカタカナでもいいから、順番にこの表に書いてください。聞き取れない場合は空欄にして、迷った時も1つだけしか書かないでください」と説明します。高齢者では記入する箇所を指でさしなが行います。実際の検査では左右の耳は別々に行い、1つめの表(20語)は4分法平均聴力+40dB、2つめの表(20語)は平均聴力+30dBの音圧で片耳につき2つの表(40語)の聞き分けを行ってもらいます。検査結果は検者が「ことばの聞こえ方検査用紙」を見ながらオージオメータ上にマーキングをして(正解は青、不正解は赤)各表の正解率を報告します。
補聴器適合検査とは
ヘッドホンを用いる聴力の検査ではなく、スピーカから出る音で両耳の聴力測定を行います。実際の検査はオージオメータと防音室内に設置したスピーカを接続し、その前方の音場に。患者を正対して着席させます(スピーカ上部と患者の額の距離は1mとします)。
(1)音場閾値検査
純音の250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hzについて、まず裸耳で聴力閾値を測定します。次に補聴器を装着して、同じ周波数について聴力閾値を測定します。裸耳の閾値は□印、補聴器装着の閾値は■印で表示して線で結びません。裸耳の閾値から補聴器装着の閾値を引いた値がファンンクショナルゲインとなります。
(2)音場語音検査
補聴器メーカー担当者が音場閾値検査のデータを参考にして、語音検査時の音圧を決定します。
ことばの聞こえ方検査67-S語表を使用し、連続した3つのレベルの音圧の語音検査を行います(例えば40dB,50dB,60dB)。この検査も裸耳と補聴器を装着した状態で測定します。
(3)環境騒音
補聴器を装着した状態で検査を行います。朗読音「夏目漱石の坊ちゃん」と環境騒音「駅(改札口)」、「歩行(交差点)」、「レジ袋を開く音」、食器を洗う音」を同時に聞かせ。「補聴器使用が可能」か「補聴器使用が困難」を回答してもらいます。朗読音は65dB、環境騒音は患者が65歳以上の場合は50dB、65歳未満は60dBで検査を行います。
耳鳴検査とは
耳鳴りに近似する音を純音、あるいは雑音の中から選定し、その音を耳鳴りの性状として判断する検査です。具体的には耳鳴音の高低の感覚(ピッチ)を周波数(Hz)で表現するピッチ・マッチ検査耳鳴り音の大きさ(ラウドネス)をデシベル(dB)という数値で表現するラウドネス・バランス検査、雑音で耳鳴りがかき消される音の大きさを調べる遮蔽検査という3つの検査を行っています。実際の検査はまず,患者に耳鳴りが左右のどちらの耳から聞こえるのか?また,耳鳴りは「キーン」という音か?「ザー」という音か?を確認します。次に選定した音を徐々に大きくして、耳鳴りと同等の大きさを求めます。最後に選定した周波数のバンドノイズを聞かせて、耳鳴りが聞こえなくなる大きさを求めます。一方、耳鳴りが「ザー」という雑音近い場合はバンドノイズを用いて「キーン」の純音に近い場合と同様に検査を行います。
インピーダンスオージオメトリとは
音が鼓膜や耳小骨を介して伝わっていく時の抵抗(伝わりにくさ=インピーダンス)を測定することにより、中耳の病変や耳小骨の動きを調べます。インピーダンスオージオメトリはティンパノメトリーと静的コンプライアンス、耳小骨筋反射からなります。
(1)ティンパノメトリー
密閉された外耳道内の空気圧を+200daP(デカパスカル、水深204mmの圧力)から連続的に圧を減じた時、鼓膜と中耳の動きに伴うインピーダンスの変化を、等価空気容量で表したコンプライアンス(伝わりやすさ)の変化として記録します。縦軸にコンプライアンス、横軸に外耳道圧をとり、鼓膜と中耳の動きの変化を記録した図がティンパノグラムであり、そのピーク値を静的コンプライアンスといいます。この検査は耳せんの密閉具合が測定の精度に影響するので、患者の耳に合った耳せんを選んで使用します。ティンパノグラムの指標は静的コンプライアンス(振幅)、ピークの位置とピークの有無などで、その形状により異常を分類します。
(2)耳小骨筋反射(アブミ骨筋反射)
耳小骨のうち内耳に続くアブミ骨は、過大な音エネルギーを内耳に伝えにくくする働きをする顔面神経支配のアブミ骨がついています。過大な音刺激が内耳、脳神経を経由し脳幹に達すると、反射的に両側のアブミ骨を収縮させます。この収縮による鼓膜のわずかな変位を、等価空気容量の変化として記録するのがアブミ骨筋反射(stapedial reflex;SR)です。周波数や年齢、音刺激の方法で異なるが、正常では反体側刺激において70〜100dBで反射があります。反射の閾値により感音難聴における補充現象の検出、乳幼児の聴力の推定し、反射の有無により顔面神経麻痺の部位と程度の判定や聴神経腫瘍、脳幹障害の診断を行います。
耳鼻咽喉科(防音室)
防音室内の聴覚検査機器
耳管機能検査とは
耳管は中耳腔と鼻咽腔をつなぐ約3.5cmの細管で普通は閉じているが、唾を飲み込んだり(嚥下)、あくびをしたりすると開放します。耳管は鼓膜の内外の圧平衡や排泄、防御などの機能を有し、この耳管機能の障害で中耳、耳管疾患が発生します。耳管機能検査には耳管鼓室気流動態法、音響法、加圧減圧法があるが、当院では音響法を用いています。実際の検査はまず、音響法プローブ(マイク)に患者の外耳道の太さに合わせて耳栓を取り付け、右耳の外耳道に挿入して密閉します。次に、7000Hzのバンドノイズを出すスピーカ先端部を患者の右鼻孔あてます(スピーカは患者に持たせる)。そして測定をスタートさせ、患者に嚥下を2〜3回(1秒に1回程度)行ってもらいます。正常であれば嚥下した瞬間に耳管が開き、7000Hzのバンドノイズが開いた耳管を通し、外耳道に伝わります。そのノイズ音が外耳道に挿入したマイクで感知され、モニタ上にスパイク状の波形として記録されます。しかし、耳管狭窄症では嚥下しても外耳道音圧が上昇しないため、波形が低振幅になります。逆に耳管開放症や耳管閉鎖不全症では波形の下降脚がスキースロープ型を呈します。なお、嚥下の際には口腔内の雑音もマイクで増幅されるので、バンドノイズのピークに合わせて同時に記録されます。
重心動揺検査とは
重心動揺計
めまいには目の前がグルグル回る回転性めまい,身体がクラグラ,フワフワ,ヨロヨロする動揺性めまいとクラっとする立ちくらみのようなめまいがあります。重心動揺計は体の揺れる程度を調べる検査装置です。患者が検出台の上に乗ると体重心の動きが検出され、モニタ上に毛糸が解かれたような波形が描かれてコンピュータにより解析されます。標準的な重心動揺計は検出台、計算部、記録部、データ保存部より構成され、それにコンピュータが接続するが、それらがコントロール部としてまとまったコンパクトな装置もあります。
重心動揺検査は直立時の足圧の動きを、3個以上の垂直加重センサー値から垂直加重の中心点を検出し、これを水平面での重心位置として垂直加重変化を求める.重心動揺計は患者の重心の位置ではなく、検出台上の足圧中心の位置を計測しています。患者の重心が加速度をもち検出台に斜めに力が加わった時、検出台に力が加わる足圧中心と実際の重心位置ではズレが生じるが、真の重心動揺とほぼ一致すると考えられます。
電気眼振図(electronystagmography;ENG)とは
眼球は角膜が(+)、網膜が(-)に荷電しており。この一対の角膜・網膜電位の変化を。電極で導出して記録したものがENGです。ENGを記録する電気眼振計として販売されている医療機器は、入力器から角膜・網膜電位を取り込み、増幅器に入ります。増幅器は感度調整器、時定数切り替え器、濾波器、ハム除去フィルタ、およびクリッパから構成されています。規定されているENGの記録条件はハイカットフィルタ20Hz、原波形の時定数は直流(direct current;DC)ないし3s、速度波形は0.03s、フィルタはOFFで、記録感度は刺激装置の動く視標(10°校正)を見て調節します。
当検査室では電気眼振計や刺激装置はなかったので、脳波計でのENG記録を試みています。
脳波計における記録条件には設定上の制限があり、止むなくハイカットフィルタ15Hz、原波形の時定数は5s、速度波形は0.03s、フィルタはOFFにして症例の自発眼振やETTの記録, 温度眼振検査などを施行しています。
脳波計における電気眼振図(ENG)の記録
前庭誘発筋電位(vestibular evoked myogenic potential;VEMP)とは
VEMPは耳石器に強大な音(気導音・骨導音)の刺激を与え、頸部の筋肉の反射、および眼周囲の筋肉の反射によって誘発される筋電位を、専用の機器により加算平均して記録する検査です。
VEMPにはおもに頸部の胸鎖乳突筋から記録するcVEMPと、眼の外眼筋から記録するoVEMPが臨床的に用いられています。cVEMPの神経経路については、球形嚢→下前庭神経→前庭神経核→内側前庭脊髄路→SCMの運動ニューロンへの抑制性入力の経路が考えられており、oVEMPに関しては、卵形嚢→上前庭神経→前庭神経核→内側縦束→動眼神経核→下斜筋への興奮性入力の経路が推定されています。一方、温度眼振検査は外側半規管に対流による内リンパ流動を引き起こして、解発される眼振を指標とし、外側半規管→上前庭神経の経路の機能を評価します。
脳波計における電気眼振図(ENG)の記録
正中法Electroneurography(ENoG)とは
顔面神経麻痺は問診、理学および画像所見で診断され、障害部位はアブミ骨筋反射、味覚検査、画像診断などを参考にして特定されます。病状の予後判定は、麻痺の程度を肉眼的に診る40点法(柳原法)や電気生理学的検査の神経興奮性検査(NET),表情筋(主に口輪筋を選定)の運動神経伝導検査(MCS)を応用したENoGが用いられています。当院では予後判定には検査の中でも特に有用有用とされているENoGを正中法で測定しています。
正中法ENoG
PCRとは
正式にはポリメラーゼ連鎖反応(porimerase chain reaction;PCR)といい生物の遺伝情報をもつDNAを複製して増幅させる方法のことをいいます。ごく微量な検体やサンプル(血液、組織、細菌、ウイルスなど)であってもそこに含まれるわずかなDNAから特定の配列だけを短時間で増やすことで目的の微生物やウイルス等の遺伝子配列が存在しているかを知ることができます。このPCRの特性を活かして体内に潜むウイルスを検出しています。
免疫機能検査とは
免疫検査機器等で免疫学的な反応を用いて感染の有無や程度、重症化リスクなど様々な用途において活躍する検査です。また血液中に感染等でつくられた抗体も調べることができます。当然原因となる抗原の検出も可能です。
新起立試験法とは
水銀レス自動血圧計
起立性調節障害(orthostatic dysregulation;OD)は、起立時にめまい、動悸、失神などが起きる自律神経の機能失調です。ヒトは起立すると重力によって血液が下半身に貯留し、静脈を経て心臓へ戻る血液量が減少し血圧が低下するので、これを防ぐために自律神経系の一つである交感神経が興奮して下半身の血管を収縮させ、心臓へ戻る血液量を増やし、血圧を維持します。しかし、自律神経の機能が低下するとこのメカニズムが働かず、血圧が低下し脳の血流が減少するため症状が現れます。ODは小学校高学年から多くなり、中学生で急増します。最近、ODの頻度は急激に高くなっています。
また、女子は男子より2割ほど多くみられます。これらの原因ははっきりしていませんが、現代の夜型社会や、複雑化した心理社会的ストレスが背景にあるといわれています。当院ではODの検査として新起立試験を行っています。これは従来の起立試験(シェロングテスト)に「起立後血圧回復時間測定」を加えた方法です。これによりODを起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群、血管迷走神経性失神、遷延性起立性低血圧の4つのサブタイプを判定します。
ポリソムノグラフィ(polysomnography;PSGとは
睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome;SAS)サスとは眠り出すと呼吸が止まる病気です。医学的な定義は10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や、呼吸が弱くなる「低呼吸」が、1時間あたり5回以上繰り返される状態をいいます。呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため、目が覚めて再び呼吸し始めますが、これを一晩中繰り返すため、深い睡眠がまったくとれなくなり、日中に強い眠気が出現します。一方、酸素濃度が下がるため、これを補うために心臓の働きが強まり、高血圧となります。また酸素濃度の低下で動脈硬化も進み、心筋梗塞や脳梗塞が起きやすくなります。
さらに睡眠不足によるストレスにより、血糖値やコレステロール値が高くなり、さまざまな生活習慣病やメタボリック・シンドロームが引き起こされます。睡眠時無呼吸症候群は原因によって閉塞性と中枢性の2種類に分けられますが、そのほとんどを閉塞性が占めています。閉塞性の主な原因は、気道(のどの空気の通り道)が狭くなることです。肥満や扁桃が大きい、生まれつきあごが小さいなどが関係します。アジア人は欧米人に比べ顔立ちが細く奥行きが短めであるため、とくに太っていなくても無呼吸を起こしやすいのが特徴です。睡眠時無呼吸症候群の治療で現在、最もよく行われている治療法は持続陽圧呼吸法(continuous postive airway pressure;CPAP)シーパップで、睡眠時に鼻マスクを使用し、気道に適切な圧力を加えた空気を持続的に送り込むことによって、気道の閉塞を防いで無呼吸・低呼吸をなくす治療法です。
PSG検査装置
一泊入院によるPSG検査
病理検査とは
病理検査にはいくつかの分野があります。①手術や生検で摘出された臓器を肉眼的・顕微鏡的に観察し、病変を細かく診断する組織学的検査、②喀痰や子宮の細胞から悪性細胞を探す細胞学的検査、③不幸にして亡くなられた患者の原因・治療効果などを解明しようとする病理解剖、④手術中に行われる検査で、摘出した組織や細胞から病変の種類や広がりを執刀医に知らせる迅速検査です。そのうち当検査室では①を主体に日常業務を行っています。
患者の生体から採取した組織の肉眼的観察、固定、顕微鏡標本作成を経て病理医が病理診断を下します。この診断に基づき、臨床医は患者の治療方針(手術・薬物・放射線療法など)の決定、変更を行います。例えば、胃の内視鏡検査で粘膜に病変がある場合はまず、その一部を採取する「鉗子生検」が行われます。次に、この病理結果が悪性病変で、治療のために外科的手術が施行されると、摘出された胃やリンパ節が「手術材料」として提出されます。組織学的分類、病変の深達度、リンパ管・静脈侵襲の有無、リンパ節・腹膜播種転移の有無などの確定診断は、病変の全体が提出されれる手術材料によって、はじめて完了することになります。
病理検査室